商流とは、物流との違いや商流が重要な理由やメリットについて解説
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商流とは
商流とは「商的流通」の略で、生産者から消費者までの一連の流れの中で、商品の所有権が売買によって移転していく過程のことです。英語では「Commercial distribution」と表記され、流通過程における商品取引、つまり所有権が売買によって移動することを意味し「取引流通」と呼ばれることもあります。
商流と物流は流通過程で密接に関係しており、製造された商品や製品がメーカー、物流センター、小売店舗から消費者に届く(物流)中で、商品の移動とともにお金の流れが発生します。これが、お金の流れとしての「商流」です。
商流は、主に商品代金の支払いと契約の締結に焦点を当てています。商品の移動とともに所有権が移ることが一般的ですが、お金のやり取りが完全に完了しない場合も少なくありません。例えば、書店では本や雑誌を大量に仕入れますが、売れ残ったモノは出版社に返品する慣習があります。この場合、販売された分についてはお金のやり取りで商流が完了しますが、売れ残った商品の所有権は出版社に戻ります。
一方、物流は企業間や企業と顧客の間で商品を運ぶための業務であり、商品の所有権とは直接関係がありません。流通とは、製造業者が所有していた商品の所有権が、エンドユーザーである消費者に移るまでの全体の流れを指しています。
商流と物流の違いとは
一般的に商流は、所有権や金銭、情報の移動を指し、物流はモノをAからBへ運ぶことです。物流によるモノの流れとは異なり、商流は受発注データのやり取りや在庫管理、販売管理等の取引に関わる流れを意味します。
役割は異なるものの、商流と物流は密接に関係しており、物流業界、特に3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)事業では、商流と物流の双方で多くの業務が発生します。
一例として出荷作業を挙げると、以下の通りです。
- 商流:荷主から受注データを受け取る
- 物流:受注データを元に商品をピッキング・梱包
- 物流・商流:梱包した商品を配送業者へ引き渡し
- (商流:出荷完了データを荷主に送信
このように、物流の作業単位で商流が深く関わっていることがわかります。
商流が重要な理由
流通は、物流、商流、情報流の3つの機能で構成されており、商流と物流は同時に進行する場合もあれば、モノを倉庫に保管したまま商流のみが進行する場合もあります。この2つの流れは「生産地域と消費地域の違い」、「時間軸の違い」、「量・種類の違い」によって様々な形態をとるのです。
例えば、時間軸の違いでは季節商品による売れ行きの差が挙げられ、量 や種類の違いでは、生産段階と小売段階における取り扱い量や商品の種類が異なります。商流は商品の所有権の移転から見たものです。所有権がメーカーから小売業者、そして最終的に消費者に移る過程を通じて、サプライチェーンの中で重要な役割を持ちます。具体的には、荷主から受注処理の依頼を受けたり、在庫データを基に棚卸しを行う等の庫内作業が、商流の一環として行われることもあります。
また、購入時の決済から商品が届くまでのリードタイム、小売業者が販売するまでの期間において、需要と供給のコントロールを行うため、商流と物流のバランスが非常に重要です。では、なぜ物流と商流が分けられるのでしょうか。
日本の流通は従来、業種別に構造化されていました。食品業界を例に挙げると、食品メーカーが製造した商品は卸売業者を経て流通し、小売業者によって消費者に販売されていました。メーカーの商品は卸売業者によって小ロットに分けられ、店頭に並べられるという多段階の流通構造が一般的だったのです。
しかし、コンビニエンスストアの普及により、加工食品、菓子、飲料、たばこ、日配品、日用雑貨等、多種多様な商品を取り扱う「業態型小売」が主流となり、商物分離が進むようになりました。流通構造の変化に伴い、物流は業種別から業態別への転換が求められたのです。
従来、商流と物流は同一経路で多く行われてきましたが、商流を分離することでロット化された貨物を最短経路で輸送することが可能となり、物流の合理化が進みました。特に医薬品や食品の卸売業においては、経営の効率化を図るため、商物分離が重要な施策として取り組まれています。
商物分離の必要性とは
品質やコスト、納期の明確化
商流と物流を切り分けるメリットの1つが、「品質やコスト、納期の明確化」です。商流と物流を分けない場合、商品の流通過程で発生したコストがどこまで商流(物流)に属するかが曖昧になり、正確なコスト計算が難しくなります。
例えば、商物分離を行わない場合、荷役作業や配送作業にかかる物流コストが商流コストとして計上される可能性もゼロではありません。これはコスト管理だけでなく、品質管理やスケジュール管理にも影響が生じます。QCD(品質・コスト・納期)の観点から、「モノの流れ」と「取引上の流れ」を分けることで、事業活動の分析をより正確にできるようになります。
倉庫作業の効率化
商物分離のもう1つのメリットは、「倉庫作業の効率化」です。商流と物流を分離しない場合、販売管理システムを活用し、紙の伝票をベースに倉庫作業を行わなければなりません。
一方、商物分離を実施すれば、物流専用の倉庫管理システム(WMS)を活用し、効率的に倉庫作業を進めることができます。倉庫管理システムはピッキング等の倉庫作業に特化しており、作業の自働化や最適化が可能です。
また、シングルオーダーピッキングやトータルピッキング、マルチオーダーピッキング等、商品の特性に合わせた方法を選び、倉庫作業をさらに効率化することができます。
物流業務のアウトソーシングが可能になる
商物分離を実施すれば、物流部門のアウトソーシングも可能です。サードパーティロジスティクス(3PL)に物流業務をアウトソーシングすることで、販売戦略の立案や顧客とのコミュニケーション等、商流部分に集中することができます。
一方、商物分離を行っていない場合、アウトソーシングの際に物流データだけでなく商流データも流出するリスクがあるため、セキュリティ面での懸念が生じます。
商流を理解しておくメリット
商流を理解することで、得られるメリットは4点あります。
(1)取引先に明確に説明ができる
データのやり取りや決済の流れには、自社だけではなく取引先企業も関わります。そのやり取りの際、物流だけでなく商流も理解しておくことで、モノとお金の両面から企業間でのコミュニケーションを円滑に進めることが可能です。
(2)必要な情報のやり取りが理解できる
例えば、物流現場では現場責任者であるセンター長だけが商流を理解していても、取引先と対応する担当者が理解していないと、データのエラーやイレギュラーが発生した際に、どの過程でトラブルが発生したのかブラックボックス化してしまいます。商流を理解することで、エラー発生時の対応スピードが大きく向上することがあります。
(3)ボトルネックが浮き彫りになる
物流と商流を理解することで、サプライチェーン全体の流れを俯瞰することが可能です。これにより、これまで気づかなかった課題やボトルネックが浮き彫りとなり、業務に携わるすべての企業に対して問題提議を行うことができ、サプライチェーン全体の最適化が図れます。
(4)業務改善を導き出せる
AIの発達により、物流業界では出荷頻度に基づくロケーション設定の自動化や在庫情報を活用した販売戦略の策定等、商流の重要性がさらに高まると見られています。商流を理解することで、様々な業務改善を実現することが可能です。
商流の今後
これからの商流はどのように変化していくのでしょうか。商流に大きな影響を与えるとされているのが、ロボットの設計や制御を行う「ロボティクス(Robotics)」と呼ばれる分野です。
例えば、RPA(Robotic Process Automation)を活用した受発注データ処理の自動化等、商流に関わる業務の効率化がさらに進むことが予想されます。
また、物流の最適化を目指す「ロジスティクス」とともに、商流の効率化を促進するために、AIやロボティクス等のIT技術を積極的に取り入れていきましょう。
まとめ
物流業界は、新たな生活様式に対応するため、非接触・非対面型への転換が求められるようになりました。政府もデジタル化による作業プロセスの簡素化や標準化を推進する「物流DX」 を支援しており、物流のビジネス形態や商流も変わると見られています。
荷主は、物流業務を発送代行会社や3PLにアウトソーシングすることで、本業に専念できるだけではなく、物流専門企業のコントロール下で、物流コストの適正化を図ることが可能です。しかし、商流と物流を一体化してしまうと、商流に関わる資金や取引先に関する情報が流出するリスクが高まります。商物分離を念頭に置くことで、物流に関する情報のみをアウトソーシングできるため、安心して外部委託することができます。
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