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SCORモデルとは?サプライチェーンマネジメントのプロセスを解説【物流用語】

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SCORとは

SCORは(Supply Chain Operations Reference model)は、米国の専門団体であるSupply Chain Council(SCC)によって提唱されたサプライチェーンプロセスの標準参照モデルです。SCM(サプライチェーンマネジメント)や生産管理の教育・認定資格を普及させるために、サプライチェーンの複雑なプロセスを標準化し、その成果を定量的に評価することを目的としています。

このモデルはどの業種にも適用できるように設計されており、共通のプロセス定義を用いて、サプライチェーンの成熟度やビジネス目標への適合性を評価するための枠組みを提供しているのです。

SCORはサプライチェーンの上位3階層のプロセスを規定し、「プロセス」「メトリクス」「プラクティス」「ピープル(人材要件)」の4つの要素からなる参照モデルを通じて、組織が非効率的にサプライチェーンプロセスを評価・改善できるように支援します。最新バージョンは2017年にリリースされた12.0です。

SCOR モデルは、以下の内容を包括的に表現しています。

  • 標準管理プロセスおよびそれらのプロセス間の関係
  • プロセスのパフォーマンスを測定するための標準的な測定基準
  • クラス最高のパフォーマンスを実現するための経営慣行

これにより、パフォーマンス向上と診断のための測定基準が統合され、サプライチェーン全体の最適化が実現可能です。SCORモデルでは、サプライチェーンのパフォーマンスを評価するために、以下の測定基準の組合せた測定セットの活用を推奨しています。

  • サイクル時間 (生産サイクル時間、営業循環サイクル)
  • 原価 (シップメント1件あたりの原価、倉庫在庫払出1件あたりの原価)
  • サービスおよび品質 (指定時間内シップメント率、不良製品の割合)
  • 資産管理 (棚卸資産の効率性)

 

SCORの主要なマネジメントプロセスとは

SCORは受注から入金に至るまで、顧客とのすべてのやりとりが包括的に管理されます。資材、部品、ソフトウエア、装置等、物理的なモノの売買だけではなく、サービスの取引や需要を理解して満たすため、市場に対して行われるあらゆる活動が対象です。

SCORで定義されているプロセスは、サプライチェーンマネジメントにおける典型的な手順を規範として示しており、サプライチェーンの設計や改善において大いに参考になります。このフレームワークは標準化された共通の定義に基づいているため、業界や規模を問わず、シンプルなサプライチェーンにも複雑なサプライチェーンにも柔軟に適応可能です。

さらに、SCORモデルではサプライチェーン全体を6つの主要なマネジメントプロセスに分類しています。

(1)計画(Plan)

リソースと要件を特定し、サプライチェーン全体のコミュニケーションを明確化して、ビジネス目標に沿った計画を立てるプロセスですこのプロセスでは、コンプライアンス、輸送、資産、在庫等の要素を考慮し、効率化を目指したベストプラクティスを策定します。

(2)調達(Source)

計画された需要または実際の需要を満たすために、必要なモノやサービスを調達するプロセスです。具体的には、資材の購買、受入、検査、供給管理等が含まれます。

(3)生産(Make)

計画された需要または実際の需要に基づき、製品を製造し納品可能な状態にするプロセスです。製造の計画、実行、品質管理等が主な内容となっています。

(4)納入(Deliver)

完成した製品やサービスを顧客に届けるプロセスです。受注管理、輸送管理、配送スケジュールの最適化等、顧客満足度を高めるための重要な役割を担います。

(5)返品(Return)

顧客やサプライヤーからの返品を管理するプロセスです。この中には、納入後の顧客サポートや不良品の対応等も含まれ、顧客との信頼関係を維持する重要なポイントとなります。

(6)業務基盤(Enable)

サプライチェーン全体を支える基盤として、ビジネスルール、データリソース、契約管理、コンプライアンス、リスクマネジメント等を扱うプロセスです。これにより、全プロセスの統合と効率化を実現します。

 

SCORのメリット

SCOR モデルは、サプライチェーンに関与する企業間で情報を共有するための共通標準モデルとして活用できます。このモデルでは、共通概念・共通用語・共通尺度を基に情報共有ができ、各企業は自社の競争力に関わる部分を詳細に分解し、業務診断に活用可能です。

SCORモデルの具体的なメリットについては、以下の5つが挙げられます。

(1)信頼性

サプライチェーンの信頼性は「完全オーダー達成率」というメトリクスで評価されます。これは、顧客からの注文に対し正確な商品を適切な品質で納入できた割合を示すものです。信頼性の向上は、顧客満足度の向上に直結します。

(2)応答性

応答性は[オーダー充足サイクルタイム」で測定され顧客が注文してから商品が届き使用可能になるまでの時間を示します。短い応答時間は競争優位性を高める要素です。

(3)機敏性

市場の需要が大きく変動した際に、サプライチェーン全体がどれだけ柔軟に対応できるかを測る指標です。例えば、「20%の増量に必要な時間」や「30日の準備期間で実現可能な増量」「30日以内でコストや在庫を増やさず減産可能な体制」等、需要変動への適応力を評価します。

(4)コスト

SCORモデルは、サプライチェーンに関するコストを詳細に把握し、コスト削減の余地の特定に役立ちます。売上原価(材料費、人件費、諸経費)だけではなく、サプライチェーン全体の管理コストを評価可能です。SCCの調査では、全業種平均売上高に占めるサプライチェーン管理コストは約10%ですが、SCORを活用した企業ではこれを3%未満に削減した事例もあります。

(5)資産

[キャッシュツーキャッシュサイクルタイム(C2C)」は、Sourceプロセスで現金が支払われてからDeliverプロセスで現金が回収されるまでの時間のことです。この指標はフリーキャッシュフローに影響を与え、企業の価値評価において重要な役割を果たします。

 

SCORの活用について

サプライチェーン管理の協会であり、認定プログラムやトレーニングツール等を提供している国際的な非営利教育機関であるAPICS(現:ASCM)は、SCORに関する認定資格「SCOR-P(SCOR-Professional)」を提供しています。この資格は、SCORモデルのフレームワークやプロセスを体系的に学び、実務での応用スキルを証明するものです。

SCORを導入する際に、こうした認定資格を活用することで、より深い理解や効果的な運用等のメリットに期待できます。SCORモデルをよりよく活用するためには、まずはSCOR-P認定資格を取得し、実務に活かせる専門知識を習得することがおすすめです。

 

まとめ

近年多発する自然災害や新型コロナウイルス等の影響により、物流の停滞やサプライチェーンの混乱が大きな課題です。このような状況下で、サプライチェーンの最適化や再編の重要性が一層高まっています。

企業のサプライチェーンは、単なる物流プロセスにとどまらず、企業戦略も支える重要なビジネスプロセスです。効率的で高性能なサプライチェーンは、ビジネスの即応性を高めるだけではなく、顧客が「欲しい物を欲しいときに欲しい場所」で手に入れることを可能にします。まさに、サプライチェーンは企業活動の根幹となり、その最適化により企業の成長と競争力強化に直結していくのです。

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